コンクリート構造物の補強・補修において、経年劣化の状況に応じた試験項目を選定し構造物の状態を調査します。コンクリート物性試験の結果は、コンクリートの劣化原因の推定に有用なデータとなり、ある程度の推測が可能となります。
コンクリート強度試験
コンクリートはアルカリ性で、内部の鉄筋を保護する役割も担っています。しかし、建物の経年によってコンクリートの中性化が進むと鉄筋の腐食につながります。鉄筋が腐食すると錆が生じて体積が膨張しコンクリート爆裂やかぶり剥落の原因となります。さらに、鉄筋の断面欠損まで進むと構造物自体の耐久性が低下します。コンクリート物性試験では、その原因を追究して適切な補修を行うことで構造物の長寿命化を図ることを目的として行います。
コアドリル穿孔によるテストピース採取
測定する躯体に鉄筋探査で鉄筋や埋設物を避け、JIS A 1108による圧縮試験が可能なテストピースをコアドリルで穿孔し採取します。採取跡は断面補修材にて埋戻し、表面を既存躯体に近い色にて補修塗装を施します。
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既存躯体から採取したテストピース
テストピースによるコンクリート圧縮強度試験
コンクリート圧縮強度試験は、コンクリートを使用する上でなくてはならない重要な試験です。そして他の強度試験に比べて測定方法が簡単なのも大きな特長です。また、この試験の結果によって他の力学特性をある程度の推測ができます。
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テストピースの圧縮強度試験
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公共機関での圧縮強度試験
無収縮モルタル圧縮強度試験
圧縮強度試験用に作成するテストピースは、メーカーのカタログなどに則って適正な方法で作成いたします。でき上がったテストピースは第三者機関(公的機関)に依頼し、状況写真とともに報告書に添付いたいます。
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テストピースの圧縮強度試験
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公共機関での圧縮強度試験
シュミットハンマーによるコンクリート強度試験(反発度測定)
コンクリート表面に打撃を加え、その反発度を記録し打撃方向や躯体の材令などの諸条件を補正を加えて、コンクリートの強度を測定します。検査機器が軽量で取り扱いが容易なため、多数の測定を必要とする強度分布の測定に適しています。
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シュミットハンマーでの強度試験
動画
コンクリート中性化試験
中性化はコンクリート表面から二酸化炭素が浸入することによって発生します。発生しやすい場所としては、排気ガスがかかる壁高欄や二酸化炭素濃度が濃くなる室内のコンクリート壁です。中性化は徐々に進行するため、建設後すぐに中性化でコンクリートが劣化する可能性は低くく、建設後数十年経過していれば中性化が発生している可能性があります。
テストピースによる中性化試験
コア穿孔により採取したテストピースに、直接フェノールフタレイン溶液を噴霧し、赤紫色に変色する部分を未中性化部、変色しない部分を中性化部と判断します。
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テストピースの中性化試験の様子
斫り出しによる中性化試験
現地にてコンクリート躯体を斫り出し、直接フェノールフタレイン溶液を噴霧し、赤紫色に変色する部分を未中性化部、変色しない部分を中性化部と判断します。
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斫り出しによる中性化試験
動画
ドリル粉末による中性化深さ試験
直径10mmドリルの穿孔で出た切粉をフェノールフタレイン溶液を染み込ませた試験紙で受け止め、変色し始める深さ位置を測定して中性化深さを判断します。
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ドリル粉末による中性化深さ試験
コンクリート塩化物含有量試験
コンクリート中に一定以上の塩化物が混入していると、中性化が進み鉄筋の腐食につながります。錆が生じて体積が膨張しコンクリートのひび割れやかぶり部分剥落の発生原因となります。さらに、鉄筋の断面欠損まで進むと構造物自体の耐久性が低下します。このため、コンクリート中の塩化物イオン濃度測定を行い、適切な補修を行うことで構造物の長寿命化が図れます。
硬化コンクリート塩化物イオン濃度測定
硬化コンクリートでは、鉄筋などの埋設物の切断を防ぐために鉄筋探査を行いコアを採取し、公的機関に測定を依頼施します。
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公共機関での塩化物イオン濃度測定の様子